認知症の人にとって、設備や備品のデザインはコントラストが強い方が、やさしいデザインなのだそうです。そこで「やさしいデザイン」かどうか、実家の内装の配色を検証してみました。
廊下の壁は白っぽい土壁で、床は木目調で、コントラストはばっちりです。
キッチンは薄いベージュの床と白一色の壁です。床と壁の境目がわかりづらそう…。
母の部屋の畳と障子ってどうなんでしょう? どっちも白っぽいけど濃い色の枠線が入っています。この線って奥行きがわかりやすく見えるんじゃないでしょうか。どうなんでしょうね。
お風呂は北側にあって薄暗いし、中は同系色一色です。お風呂の扉は半透明で扉の周りの壁は白っぽかったから、母には扉があるかどうか見えなかったかもしれません。母は、お風呂に自分から入ろうとした事はなかったと思います。
そして、トイレ。
トイレの扉は木目調で、なぜかその周りの壁だけ木目調でした。という事は、トイレの扉も認知症の母が見ると、何もないように見えてたのかもしれません。トイレの中は、淡いピンクのタイルと白い土壁に真っ白一色の便器。奥のタンクも真っ白です。やさしくないデザインですね。
画像↓は実家のトイレではありませんが、だいたいこんな感じです。

母をトイレまで誘導して「トイレでしょ?」って聞いても、首を横に振って部屋に戻っちゃってたんですよね。便器が見えてなかったから、トイレじゃないと思ったんでしょうか。
誰の誘導もなく自分で廊下を進んでトイレに行けたとしても、トイレの扉が見えなかったら?
日が差し込む時間帯で明るい時間帯で、扉があるのがわかったとしても、開けて見たら壁と便器が補色になって、あるのかどうかわからなかったら? そこはトイレじゃなかったって、何もせずに出て来てたのかも。
母は、庭でしたことがあります。
誰かがトイレの電気を点けっぱなしにしていて、便器が見えても、ふたが開いているかどうかが見えてなかったら?
母は、便器のふたの上にしたことが何度かあります。

電気を点けて明るくしたくても、スイッチが見えなかったら?

トイレットペーパーがどこにあるか、見えなかったら?

わたしは母がトイレの場所を忘れたんだと思っていました。便座のふたの上に座って排泄した時は、「便座のふたを上げてする」っていう段取りを忘れてしまったんだと思っていました。スイッチを押したら電灯が点くって事を忘れたんだと思っていました。トイレットペーパーを使う事を忘れたんだと思っていました。
でもそうじゃなくて、見えてなかっただけなら? トイレで排泄する段取りを忘れたんじゃなくて、トイレ・便器・ふた・スイッチ・トイレットペーパーがそこにあるのが見えなかっただけなら?
トイレの配色を変えて見えやすくしていたら、失敗しなかったのかもしれません。どうでしょう?
まあ、今更ですよね。